【実証実験】スマートウォッチを活用した動画関心度計測とテレビCM視聴率計測の可能性について

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株式会社ヒトクセの経営企画室では、新規事業や実証実験等で新たな文化を世の中に送り出すべく活動しています。今回はスマートウォッチの技術を活用し、バイタルデータ(心拍数データ)とテレビCM等の動画関心度に関する検証と、個人視聴率計測に関する新手法の検討を行いました。
 

【目次】

  • 背景
  • 仮説 〜スマートウォッチを利用したバイタルデータ活用広告と個人視聴率計測〜
  • 実験内容
  • 実験結果
    ①バイタルデータ(心拍数)と動画関心度について
    ②スマートウォッチを活用した個人視聴率計測について
  • 結果と考察

背景1. 〜広告業界における、バイタルデータ活用と個人視聴率の重要性〜

近年、脈拍や体温などの「バイタルデータ」と人間の感受性と関係に関する研究が盛んになってきており、様々な論文が発表されています。我々ヒトクセが属する広告業界では、いかにしてこのバイタルデータを取得し、広告の出し分け等を行い、広告効果へ還元するかということが一つのテーマとなっています。
 
現代のインターネット広告では、基本的にスマートフォンやPCでの過去のアクセス情報やクリック情報をベースに関心度推定が行われていますが、その情報は果たして「その時」の関心度にどれだけ近いものなのでしょうか。例えば車などは一度購買してしまえば、大多数の人が一瞬にして次回購買への関心度は下がるはずです。「今その時」の関心度を推定するためには、インターネット広告では一山超える必要がありそうです。
 
またテレビ広告はそれ以前の話で、まず誰が何を見ているかを特定することから必要となります。最近では世帯視聴率から個人視聴率に注目が置かれているものの、①自然視聴に限りなく近い状態で②世帯内の個人を特定し③番組視聴している人が番組内のどの広告を見ているのか、を判別できるかという点で、これから更なる発展が必要になってくるでしょう。本来であれば、テレビに計測用カメラを設置することにより、ほぼ正確に個人視聴率は計測できるはずです。しかしながら、家庭内という環境の都合上、設置の許諾自体がハードルとなることも容易に想像できます。

背景2. 〜スマートウォッチの普及〜

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別軸で、日本でもスマートウォッチの普及が徐々に進んできています。身の周りの人で、スマートウォッチを着用している人もいるのではないでしょうか。
 
各社スマートウォッチの提供している機能を調べてみたところ、リアルタイムでの心拍数や音声取得の機能は標準的に搭載されていることが多いようです。また、最近ではヘルスチェックにも活用されるため、帰宅後に着用している人も一定量いるようです。今回はここに注目してみました。

仮説 ~スマートウォッチを利用したバイタルデータ活用広告と個人視聴率計測~

本背景からスマートウォッチを活用した課題解決手法として、2つの仮説が立ちました。

①スマートウォッチを活用した個人視聴率計測に関する仮説

仮にテレビ視聴率計測モニターがスマートウォッチを着用していた場合、以下のように現代の計測手法の様々な課題が解決できる可能性があります。

  • 個人特定した状態での視聴率計測ができる。
  • 一般的な機械式調査と比較し、より自然視聴に近い状態を作れる。
  • 取得音声と配信動画音声を比較することにより、テレビからの距離や配信動画音声が拾えなくなったことがわかり、テレビ視聴(特に聴覚に届いているか)についてより実態に近く計測できる。
  • 録画再生視聴も容易に計測できる。

②スマートウォッチを利用したバイタルデータ活用広告に関する仮説

スマートウォッチでは心拍数を取得することができ、そのデータがスマートフォン側に蓄積される仕様が主流となっています。仮に心拍数とテレビCM関心度に相関性があれば、(個人情報提供の観点は考慮する必要があるものの)少なくともモニター拡張型でのバイタルデータ活用広告が実現できるのではないかと考えました。

上記2点の実現可否を検討すべく、実証実験を行いました。

実験内容

実験は以下のフローで行いました。

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●図1 実験手法の模式図

まずスマートウォッチから心拍数と音声情報を取得し、メタデータ化するシステムを構築しました。このデータと実動画データを比較および集計することで、最終的な検証結果データとしました。

実験結果

①バイタルデータ(心拍数)と動画関心度について

まずミクロな傾向がイメージしやすいよう、テレビCMの前にミュージックビデオ視聴時にどのような傾向が見られたかについて、代表的なサンプルで説明させていただければと思います。

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●図2 ミュージック・ビデオ視聴時の心拍数変化

図2がミュージックビデオ視聴時の心拍数変化を示したグラフです。一見して何かしら傾向が出ていることはわかると思いますが、これだけでは仮説が立ちません。
この変化を様々な軸で検証していった結果、メロディ展開との相関性がありそうなことが判明しました。

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●図3 メロディ展開と心拍数の関連性

図3の様にメロディ展開と並列してみると、その傾向もわかりやすいかと思います。またこのように並列してみると、様々な仮説が立ちます。

  • 前奏やエンティングPVなど、歌がないタイミングで心拍数が低下するのは、視聴者が 本来期待したコンテンツではないから?また逆にリラックス状態だから?
  • 2番サビで心拍数が低下しているのは、1番サビとほぼ同様の内容だから?

今回の本題ではないため、この仮説の検証は行なっていませんが、少なくとも一定の傾向が出ることがわかりました。

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●図4 好きな曲とその他での平均心拍数増加率の比較

またマクロに分析してみたところ、好きな曲のミュージックビデオを視聴している時の方がその他に比べて平均心拍数が低下するという結果となりました。ここから、好感度や関心度と心拍数は一定量比例しているのではないかという仮説も強くなりました。

では本題で、テレビCMと心拍数の相関性についての検証結果に移ります。

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